【ゼミ活動の様子】井上ゼミ
井上専門ゼミの紹介
「英語×ビジネス=スペシャリストをめざす」
2022年度、3年生の専門ゼミでは、6名のグループメンバーが「コーヒー市場の分析」をテーマにして、スタバ、ドトール、タリーズの3社を比較調査しています。その成果はインターゼミ発表会で報告される予定で、報告日に合わせて、夏休み前からチームを編成しています。現場での店舗観察を繰り返して、それぞれの店舗の微妙な違いを観察するとともに、どの店にも共通する側面についても観察しています。このような現場観察に加えて、すでに発表されているさまざまな資料、データ、文献、著作にもできるだけアクセスして「比較調査」のコンテンツを増やしています。6名で担当する以上、お互いの分業が必要になります。全体の構成を考えたうえで、各自が担当するパーツを分担して、作業を始める、そして、それらをつなぎ合わせて、「すり合わせ」を調整しますが、一人でやるのとちがってチームワークが必要になります。
今年度はこのようなグループ発表を進めていますが、わがゼミではこれまでは個別報告が中心でした。楠木建『ストーリーとしての競争戦略』(2010年)を3年生の1期で輪読して、企業の競争分析について一定の理解を共有してきました。300頁を超える本で、「先生、長い本ですね」とみなさんから言われます。それでも、大事なことは繰り返し書かれている、事例の叙述が多いなど、この本自体がひとつのストーリーを以って書かれているのが魅力です。最近では、楠木建さんの「ストーリー概念」を自分なりに消化して、「CoCo壱番」の企業分析を仕上げてくれた卒業生がおられます(2021年度「グローバルビジネス学科優秀卒業論文集」所収)が、通常は、自分の関心あるさまざまなテーマについて報告を準備します。今年のグループ学習は例外的で、同じ基礎演習からのまとまりでつながっているのでしょう。
そして、名古屋外大グローバルビジネス学科の看板である「英語×ビジネス」を踏まえて、ゼミでは、中根千枝『タテ社会の人間関係』(1967年 講談社新書)の英語版、Chie NAKANE, Japanese Society, University of California Press,1970を並行して輪読しています。もう60年以上も前に書かれたベストセラーですが、現在も売れ続けているロングセラーの書。著者は、この本の冒頭で、それまでになかった日本社会論を展開すると意気込みを述べています。そして、彼女のタテ社会論はもちろん批判もありますが、現在ではむしろ常識の一部になってさえいます。その英語版ですが、実は単なる英訳ではなく、著者が自ら英語で書き下ろした本です。中根さんのタテ社会論を読むことで、留学して行った先の国で、日本について聞かれたとき、あるいは、日本と外国の社会の比較について聞かれたとき、あなた方の頭の中の「引き出し」は確実に増えるでしょう。ちなみに、この英語版も海外でロングセラーを続けています。
本学の看板である留学して「何でもみてやろう」の精神は大事ですが、観察力を養うためにも先人たちが欧米社会について、そして日本社会についてどう考えていたのかについて確認しておく作業は大事でしょう。
ミニ論文から卒論へ
ゼミでの学習の仕上げは卒論です。それが単位つきであろうと、そうでなかろうと、ゼミでは3年生のミニ論文の準備をベースにして、卒論に進むことを奨励しています。学びの形式が従来の読解・記述型から口頭での発表型へと多様化しています。だが、PPTの準備・発表だけに頼る学びは、やはり限界があります。ゼミでは、インターゼミでPPTによる報告を準備・発表したのちに、各自が個別にミニ論文として自分の論文に「落とし込む」ことを基本にしています。
このような内容が井上ゼミの現状です。ここまで定着するのに、本学に着任して以来、5-6年が必要でした。学生さんの反応を見ながら、試行錯誤の結果たどり着いたスタイルです。今にして思いますが、グローバルビジネス学科の理念とは、「英語×ビジネス」ですが、われわれは、英語を十分に操れるビジネスマン、つまり、スペシャリストの養成を目指している。このHPでビジネス学科の卒業生の活躍を社会するコーナーができています。それを見ますと、まさにスペシャリストこそ、われわれのロールモデルのひとつと言えるでしょう。従来型のジェネラリストタイプが否定ないし過小評価されるわけではありませんが経済学で言うわれわれの「比較優位」は語学スペシャリスト・ビジネスパーソンではないでしょうか。スペシャリスト養成の大学であることを十分自覚したい、というのがゼミ教育での願いです。